Futon Side Stories 3


〜小さな人たち〜





シルマールの森のはずれに、一人の美しいエルフの青年が暮らしておりました。


赤い髪をたなびかせ、輝くように美しい面差しの丈高きそのエルフは、


シン・ウンドゥ=ミエル・サワダール、サワ谷の王の二番目の王子でした。


彼は、故あって実家を追い出され、ここシルマールに居を構えているのです。



「おーい!シーン!いるかぁ!?」


「げんきかぁ、シン!」


「うまい茸持ってきてやったぞ、シンちゃん。」


「遊びにきたぞーっ。酒盛りしようぜっ!!」



シルマール一帯は豊かな穀倉地帯で、たくさんの村々が点在しています。


そのうち、シンの住んでいる森に最も近い村は、


コビット族と呼ばれる小さい人たちの村でした。



彼らは、陽気で裏表がなく、人なつこくて食べることと眠ることが大好きな種族です。


排他的なエルフ族も彼らとだけは仲良くすることが多いのです。



今日遊びにきた四人は、コビット族の若者です。


森にキノコ狩りに来て迷子になっているところを、シンに助けられたのです。


四人はシンの館に一晩泊めてもらい、一人暮らしで退屈していたシンと


意気投合して以来、しばしば訪れてはシンの心を慰めているのでした。



ノダッチ・バギン=ズ、クマ・ギャム=ジー、


ウッチィ・トゥッ=ク、ミナミ・ブランディ=バックは共に29歳。


33歳で成人となるコビット族としては大人になる手前の


まだまだやんちゃな未成年でした。



冒険に出かけたり勉強ができなかったり悪戯ばかりしたりと


「出来が悪い」とレッテルを貼られている彼らは


何となく村では肩身が狭く、外面にこだわらない心優しいシンの館へ来ることを


何よりも楽しみにしているのでした。



麦酒を飲んだりパイプ草を吸ったり、ひとしきり談笑した後で


おもむろにシンが口を開きました。



「お前ら、俺になんか相談があってきたんじゃねぇの?」


四人は顔を見合わせました。


「実は・・・」



四人が話し始めたことは、シンに取って聞き捨てならないものでした。


オークの軍団が西から侵攻して来ると言うのです。




コビット村を訪れた旅の商人たちの話では、ここよりずっと西の地でオークの軍団が挙兵、


通り道の村々を制圧しつつ、次第に東へと進軍していると言うことでした。



進路にはここシルマールやコビット村、そしてカミヤマールがあるのです。


東のカミヤマールにはクミコがいます。


最強を誇る馬の司の国の騎士たちと言えども、オークの軍団が相手では苦戦を強いられるでしょう。


コビットの村もただですむとは思えません。


シンはすぐさま出かける支度をはじめました。



「どうするんだ?シン!」


「カミヤマールに行く。行ってキョウさんと今後のことを打ち合わせなきゃ。


場合によっては親父に助けを乞うことも考える。」



「「おい、俺たちも一緒に行くぜ」」


「「そうだ。そうだ。」」


「お前ら・・・サンキュ。」



四人は戦いに行くシンの助けをしたいと思ったからこそ、共に行くことを申し出たのですが


もう一つ、なかなか進まないシンの恋をなんとかしてやりたいとも思っていたのです。


更に、これほどの美声年を虜にしている姫を、


一目見てみたいと言う気持ちもありました。




こうして、彼らが連れ立ってカミヤマールへと向かっていると


はぐれオークが5匹ほど村を襲おうとしているところに出会いました。


一人の騎士が勇敢に村人を守って戦っていますが、劣勢は明らかです。



コビットの四人を安全な所まで下がらせると


シンは背負っていた矢立てからエルフの矢を取り、オークを狙います。


弦音が5度鳴り終えたとき、オークはすべて倒れておりました。


百発百中、凄まじいまでのシンの腕前でした。



「シン・・・お前、すっげぇなぁ・・・」


日頃の穏やかな雰囲気と、クミコ姫へのヘタレ振りしか知らない四人に取っては


驚くべき出来事でした。



戦っていた騎士が御礼を言おうと近づいてきました。


「あれ?ミノルさん。」


「あっ、エルフのシンさんじゃないですか!おかげで助かりました!


今日はまた、お嬢の所で?」


「いや、今日はキョウさんに・・・」


「じゃあ、ご一緒しますぜ。そちらの小さい方々は?」


「あ、俺のダチです。」


「では、そろって黄金館へどうぞ。」


「「「「はいっ。よろこんで!」」」」




†††



「しん、ちょっとかっこいいね。」


「えっ、そうかなぁ。とおくからやでうつだけなんて、きっとゆうきないんだよ。」


「そっかぁ。」


「ふっふっふ。面白かったか?」


「うーん。まあまあかな。」


「だいぶましー。」


「じゃあ、歯磨きしよっか。」


「えー、つづきはぁ?」


「また今度、続き書いてあげるなー。」


「「わーい!」」


「ね、ね、おひめさま、どっちをすきになるかな?」


「ともやーんだろ。ぜったい。」


「そーなの?」


「かっこいいし、たよりになるし、おんなはそういうおとこがすきなもんだ。」


「そっかぁ。そうだよねぇ。」


「お前たち、いい加減にしないとお父さんが拗ねてるぞ(笑)。」


「ふん。」


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ヘタレ王子を少しだけ格好よくしてみました(当社比)。


今回は、四人組を出してみたかっただけです。

更に風呂敷が広がってます。

配役についての突っ込みはなしの方向で・・・(笑)


エルフの王子の恋の行方はどうなるのでしょうか。

子供たちの予想では、今のところライバル優勢のようです(笑)。


いつもの通り続きがあるかどうかは、皆様の暖かいご支援に掛かっております。

よろしくお願いします。



2009.5.6

双極子