01: 回折格子
かいせつ‐こうし【回折格子】(クワイ‥カウ‥)
(diffraction grating) 光を回折させて、スペクトルを得るのに用いる装置。ふつう、ガラス板や金属板に1ミリメートル当り数千本の平行な溝を等間隔につけた平面格子を用いる。
(広辞苑第五版)
俺らは、はみ出し者鼻つまみ者と言うレッテルを貼られて、学校のはじっこの半地下教室に押し込められている。表からは見えないように。表の奴らの邪魔にならないように。都合の悪いものは隠してしまえと言う大人達の勝手な思惑のもと、隔離された俺らは同時に放置もされていた。
誰も俺らなんか気にしない。
誰もが俺らを嫌ってる。
そんな環境に俺らは倦み、深く淀んだ暗い情念を発散させる術として、世の中すべてのものに反抗していた。「正しい制服」に反抗し「望ましい髪型」に反抗し「正しい生活態度」に反抗し「社会道徳」に反抗し「学校の秩序」に反抗する。
その反抗が、実は大人達に認めてもらいたい心の裏返しだと気付いたのは、あの女が来てからだ。
あの女・・・俺らの新しい担任教師・山口久美子は、変な奴だった。
ドジでおっちょこちょいで、余計なお節介を焼いて。
でも、身体を張って俺らを守ってくれる。
全力で打つかってきてくれる。
俺らに対する態度には、一本筋が通っていて揺るがない。
やり場のない怒りを滾らせる俺らのエネルギーを受け止めて、様々な形で返すヤンクミ・・・
時に理不尽な俺らの反抗心が、甘えだったり見栄だったり無知から来るものだったりと気付かせてくれた。やり場のない怒りが、認めてくれない大人達への救難信号なんだと、気付かせてくれたんだ。
ヤンクミの曇りのない瞳が、俺たちの心を反射する。
時に明るく、時にどす黒く、様々な色を返してくれる。
ヤンクミの瞳に映った俺らの姿を見て、俺らは自分を見つけることが出来た。
たとえ、迷ったとしても何度でもやり直せばいいのだ。
「あたしは、一生お前らの担任だからな!」
力強く請け負ってくれたから、俺らは前に進めるよ。
どんなに誤解されても、どんなに理不尽な目に遭っても。
お前が俺らの中の光に気付いてくれたから。
「ヤンクミ!」
「お、沢田ーっ!お前も卒業だな!ピンチの時はいつでも呼べよ。
すぐ飛んでいって助けてやるから!」
「そ?」
「おう!あたしはお前の先生なんだからなっ。」
「じゃ、今。」
「は?」
「今、俺ピンチ。助けてくんねぇ?」
「よーし、何でも言ってみろ!」
力強く請け負うヤンクミに近寄って、耳元でそっと囁く。
「俺、お前が好きなんだけど。」
ばっと飛び退いてかーっと真っ赤になるヤンクミは、ほら俺の心をちゃんと受け止めてくれてる。
「そそそそそれの、どどどこがピンチなんだっ////」
そんなこと言うからしれっとして言い返す。
「好きな女が振り返ってくれねぇんだ。ピンチだろ?」
一瞬怯んだ隙をついて、頬に唇を寄せる。
「ーーーーーっ!////」
頬をさすって口をぱくぱくさせているヤンクミが可笑しくて、俺は大声で笑った。
今日の空は快晴。
春風がこれから始まる俺らの新しい日々を祝福してくれているようだった。
------
こんにちは!ご無沙汰しております。
双極子です。
突発的にはじめた「お題」SSです。
「お題」と言っても自分で考えたものなので厳密な意味では「お題」とは言わないのでしょうが、
一応タイトルを先に考えておいて、後からお話をつけると言う形は踏襲しているので
大目に見て下さい(汗)
で、まあいつものように余計なところで自己主張、ってな事で考えた「理系なお題12」
内容と題がどこまで一致するか、さーっぱり先が読めませんが
ツキキワの拍手の方でのんびり更新していきたいと思っています。
よろしくお付き合いくださいませ。
2010.5.30 ツキキワの拍手にアップ
2010.6.21 サイトにアップ