それからまた、十日程経って。

沢田は今度は遊園地に行ってみたいと言い出した。なんだかこいつ、キャラが変わってないか?

それでも、いい季節だし外で遊ぶのが大好きなあたしは、いそいそと下調べをしてたりする。

「ヤンクミ、この雑誌だけど・・・」

付箋を一杯付けた雑誌を何冊も抱えて沢田が聞いてくる。

遊園地特集の雑誌を一杯買って調べておいたんだ。

「おう、それそれ。それな、あたしの部屋に運んでくれるか?

今、お茶持っていくからさ、一緒に部屋で見よ?」

二階へと上がっていく沢田を横目に、テツが用意してくれた紅茶とアップルパイをお盆にのせて後を追うように部屋へ上がる。

階段を上った所で、机の前で沢田が立ちすくんでいるのに気が付いた。

どうしたんだろうと覗き込むと、手で口を押さえて真っ赤になって固まっている。

「沢田、どうした?お前・・・」

言いさして気が付いた。こいつ、あたしのメモを見てる〜〜////

「あわわわわ、そそそそそれはな、わわわっ。」

「ヤンクミ・・・これ。」

メモを差し出す。

「あのあのあの、その、」

「これ・・・意味、わかったんだ・・・」

沢田は顔を覆ってどさっとベッドに座り込む。

「いや、その。」

「じゃ、俺の気持ち、最初から知ってたんだ・・・」

「まあ、その、あの・・・」

「はぁ・・・俺、みっともねぇの。」

頭を抱えたまま、じっと動かなくなってしまった。

耳が真っ赤に染まっている。

「いや、あのな?その、メモの言葉なんだけどな。そのう・・・意味がな・・・」

「一番上。」

「え。」

「一番上の解釈で合ってる。」

一番上って、じゃあやっぱりあの言葉は愛の告白ってこと?

沢田があたしを?

本当に?

それじゃあ、それじゃあ・・・

ぺたんとベッドに座ったあたしを、沢田はじっと見ていたが、やがて立ち上がってあたしの前へくる。 

沢田は膝を付いてあたしの右手を取るとまっすぐ顔を見つめる。

Mon coeur sera toujours pour toi. C'est dur sans toi.

俺の心はお前のものだ。お前なしには生きて行けない。」

あの言葉をはっきり言ってくれる沢田に、あたしは頷くことしか出来なかった。

「山口久美子さん。この後の人生のすべてを俺と共に生きてくれませんか?」

「・・・っ!」

「今の俺は、何者でもない何の力も持たないちっぽけな男だけど、

お前のことを一生愛し続けてずっとそばに居続けるって事だけは自信を持って言える。

俺の人生のすべてをかけてお前と共に生きる。見つけたんだ。俺の人生を。」

「それって・・・」

「お前だ。お前とともに歩むよろこびを俺は見つけた。 だから・・・」

「さ、沢田・・・」

「返事は?」

沢田が大きく腕を広げる。

「そんなのっ『はい』に決まってるっ!」

沢田の胸に飛び込んで行きながら半分泣き声であたしは叫んだ。

「ヤンクミっ。」

あたしをぎゅっと抱きしめて震えている沢田の腕の中で、あたしは声を上げて泣いてしまった。

再会の日から2ヶ月。

なんだか遠回りしちゃったけど、本当に良かった・・・!

ふと気が付いて顔を上げると。

黒い大きな瞳が熱を含んであたしを見つめていた。

その瞳が段々潤んでくるのがはっきりわかる。

綺麗な瞳に引き込まれて見つめていると、沢田の顔が近づいてくる。

「ヤンクミ、目ぇ瞑って・・・」

熱い息が頬にかかる。

沢田の唇があたしの唇に触れる・・・あ、柔らかい。

差し込まれた舌があたしの口の中を優しくかき回す。

熱い・・・気持ちよくてどうにかなっちゃいそう・・・

あたしは沢田の首に腕を回してぎゅっとしがみついた。

「沢田ぁ・・・」

「ヤンクミ・・・愛してる。」

その言葉のあとにまた唇が降ってくる。

夢にまで見た沢田の口付け。

夢とまったく同じ感触の熱い唇、熱い舌・・・

「夢と同じだ・・・」

思わず呟いたら、沢田が唇を離し呆れた顔をしてあたしを見た。

「夢と同じって。もしかして覚えてないの?」

「え?ええ?」

「二度目なんだけど・・」

沢田が可笑しそうに言う。

「ええっ。沢田、誰としたんだ??」

「・・・お前と、だけど?」

「二度目って・・・うわっ、じゃあ、あれって夢じゃなかったのかぁ!?」

「夢だと思ってたんだ。そうか、よかった。」

「へ?」

「なかった事にしたいのかなーと思ってて。朝起きて無視するくらい嫌だったのかとか考えて聞けなかったんだ。デートに誘っても態度変わんないし。」

「デデデデデートって、何何、なんのことーっ!」

「先週の。映画とか行ったじゃん。」

「あれってデートなのかぁ!?」

「・・・自覚なかったのか。そっか。安心した。」

んな可愛いことを言って沢田がぎゅぎゅっと抱きついてくるから、

熱くて気持ちいい沢田の身体をあたしも負けじと抱き返す。

「沢田。愛してるっ♪」



(了)