※原作で卒業後。2008のあとです。性表現と暴力表現があります。
ハッピーエンドですが、途中の慎がひどいやつです。
イメージを壊されるの嫌と言う方はお避けください。
In the Lunatic Red Nightの久美子さん視点です。
赤い獣に食いちぎられる。
紅蓮の炎に焼き尽くされる。
地獄の業火のように熱い情熱の嵐に翻弄される。
彼を捕らえる檻は堅く、囚われの塔は燃え上がっているけれど
そこへいく道は暗くて見いだせないけれど。
きっとあたしが救い出す。
だってあたしは知っている。
あたしを貪るこの獣が、本当はあたしを愛していることを・・・
On the White Cloud Valley
全治一か月のはずの怪我は、無理したせいでそろそろ二ヶ月経とうかと言う最近になってようやく治ってきた。自業自得だって沢田は言う。全く、口の減らないやつだ。ま、あたしのことを心配してるからってのがよく分かるから、あえて逆らわないけどさ。
今日はいつもの通り、学校帰りに迎えにきた沢田と夕飯を食べて帰る事にした。体調もいいからってことで一杯だけビールを許してもらって(ったくなんで沢田の許可を取んなきゃならないんだ?)、ご機嫌のあたしは沢田に送ってもらって夜道を歩いてた。
「来週あたりならもう大丈夫だろうし、どっか出かけようか?」
「来週はまだ無理だろ。」
「こもってばかりだったからさ。ドライブでも行きたいな!」
「お前が運転すんのか?」
「どーんと海の見える温泉に入って、おいしい魚をつまみに酒飲んでー。」
「酒飲んだら運転できないだろ・・・お、そっか、一泊旅行に誘ってくれてるわけ?」
にやっと笑った沢田がぐっと顔を近づけてくる。
「げ。」
あいつの顔が至近距離で
「じゃーいろんなことが出来ちゃうな♪楽しみだなっ。一緒に温泉だもんな。今まで我慢してた分、穴埋めして貰おうっと。いろいろと、な。」
なーんていたずらっぽい眼で言うからさ。
「ひえええ」
真っ赤になって構えてしまう。
そんなあたしを沢田は面白そうに眺めてる。
くそー。すっかりあいつのペースじゃねぇか。今に見てろー。
本当はさ。初めて出来たこ、恋人ってやつだし、世間一般のお嬢さん方のような甘ーいカンケイての、ちょっとやってみたいなーなんて思ってたりして。
沢田のきれいな髪や長い指、きれいな頤、華奢な肩、柔らかそうな唇・・・
そんなところに触れてみたくて、でも女の方からって言うのはなんか気後れして。
そんな事に興味もないのか、怪我をしたあたしを気遣ってなのか沢田は紳士で。
さっきみたいにふざけはしても一線は越えない。
それがちょっと物足りないくせにほっとしてたり、こんな感情は慣れなくて戸惑ってしまう。
えーい、女は度胸!
酒の勢いもあって、あたしは常になく大胆な行動に出ちまった。
ちゅー。
・・・
・・・えーと、この後ってどうすればいいんだ・・・?
うーっんとお母さんの日記だと・・・って待て待てあたし、本当にそんなことするつもりか
・・・でもこうしていつまでも口くっ付けて突っ立ってるのもバカみたいだしな・・・
えいっ思い切って舌を・・・し、舌を、
・・・
・・・うわぁ、もうだめ・・・
限界がきたあたしはとすんと沢田の胸に倒れ込んだ。
沢田はなんだか傷ついたような目をして身体をこわばらせていた。
あ、なんかまずっちまったらしい・・・
どうしていいかわからなかったけど、取り敢えず背中に手を回してぽんぽんと慰めるように叩いてみた。沢田はあたしの肩に顔を押し付けて小さく震えていたが、段々リラックスしてきたみたいだから、元気を注いでやるぞーってかんじで、ぎゅっと腕に力を込めて抱きしめてやった。おまけに頭をなでてやったら、沢田は子供みたいに無邪気な顔で微笑んだ。
うわぁ、花が咲いたようってこう言うときに使うんだな。男だけどさ。
思わず
「お前は、かわいいなぁ。」と言ったら
むっとしながら反論するから、それがまた可愛くて。
思わず笑っちまった。
「ふふふ・・・大好きだぞ。慎・・・」
そんなことを言って名前を呼んでみたり。
たはっ恥ずかし///
真っ赤になって固まっている沢田は年相応の少年に見えて。
愛おしさでいっぱいになってしまって、もう一度おやすみのキスをした。
ちょっと離れて眺めると、月の光の中、お話みたいにきれいなきれいな男の子・・・
囚われの塔の王子様。
なぜだかそんな言葉が浮かんだけれど。
あいつの場合、助けに参上する女騎士が喧嘩っ早い極道もんだからなぁ。
まるでお笑い劇場だ。
お付き合いとやらをしてるけど、お似合いにはほど遠いな。
おとうさんとおかあさんみたいには、なれないのかな・・・
そんなことを考えながら黒田の門をくぐった。