※原作・卒業後、おつきあい中。しょーもないバカ小話です。
遠花火
「お、上がった、上がった。たぁまやぁ~。お前もこいよ!」
俺の部屋のバルコニーでご機嫌な恋人に、冷えた缶ビールを差し出しながら
後ろから華奢な身体を抱きしめる。去年は寸止めだったからな。ふっ。
「・・・きれいだな。」
「おぉ!花火はいいよなー。」
どーん
どんどどど
どーん
・・・
「お、尺玉だ!・・・でかいぞー。」
どーーん
「きれいだなー。」
「お前の方がきれいだ・・・」
ひときわ大きな花が夜空一杯に開き、ついで腹に響くような音がする。
「おー、でけぇ・・・700mはあるぞ。」
「ん?何がだ?」
細い腰に腕をまわしながら聞く。
「ああ、花火の直径だよ。」
「なんでそんなことわかるんだ?」
言いながら久美子の首筋に唇を寄せる。
「ちょっ・・・やん///
さっきからあがってる花火、光ったあとで音が聞こえるだろ?」
「ああ。」
「零度での音速が331.5m/sなんだけど、1℃上がるごとに0.6m/sずつ増えるんだ。
今の気温が30℃だから音速は349.5m/s、んでもって光ったあと3秒位で
音が聞こえるから、花火の中心点までの距離は1050mだろ。
光の速度が299,792,458m/sだからそれによる遅れは考えなくてもいいんだ。
さっきの大きいやつは仰角45°で見えたから2の平方根1.41421356で割って
打ち上げ会場までは740mってとこ。だから花火が開いた高度は740mで、
地面から花火の中心までの高さがが大体花火の直径と同じかちょっと
高いくらいだったから、花火の直径は700mくらいと見積もった訳だ。」
「・・・はぁ。そうスか。」
「お、今度のはちょっと小さい。300mだ、あ、たっまや~ぁ。
第二会場でも上がり始めたぞ。あっちは・・・1250mほど離れてるな。
どうやって求めたかって言うとだな・・・」
せっかくの花火大会の夜、ふたりきりのバルコニーで、俺の腕にすっぽり抱えられて
得意げにそんなことを並べ立ててる恋人を前に、俺は途方に暮れていた・・・
※久美子さんは理系なんです。
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前の話が暗かったので、明るいギャグを書こう!と思ったのに、出来たのはこれです。
こんなものを書くために夜中に計算までしている私はアホです。
2009.1.31 ツキキワに投稿
ちなみにここで言っている暗い話と言うのはLunatic Red Nightのことですね。
2010.6.23 サイトにアップ
双極子拝